放課後の子ども達の生活行動からみた友達関係〜「たけとんぼ」会員へのインタビュー調査から〜
秋峯知子
研究の目的
ゆとり教育をめざして教育課程が変更されて久しいが、現代の小学生は、必ずしもゆとりを持った生活がなされているとは言い難い。私は学校週5日制になった小学生の休日の活動を支援する、東京学芸大学の造形教室サークル「たけとんぼ」の一員として活動してきたが、そうした子どもたちの放課後や休日の過ごし方に深い関心を持った。近年、子どもたちは多忙感を感じており、親しい友人関係を作れない問題も指摘されている。そこで本研究は、子どもたちの生活と放課後の過ごし方の実態を明らかにすると共に、そうした生活環境が子どもたちの友達関係を豊かにすることにつながっているのか否かを明らかにすることを目的とした。
方法
対象者は、造形教室サークル「たけとんぼ」の活動に来た子どもたちである。「たけとんぼ」は、東京学芸大学の学生が、近所の子どもたちを集めて造形活動を行うサークルで、申込みにより会員になった子どもたちが土曜または日曜日に行う月一回の造形活動を楽しんでいる。調査時期は、10月3日、11月27日、12月12日、1月8日の4回のサークル活動中であり、インタビュー調査の内容は、一週間の生活行動や、習い事の活動、友達関係についてである。
結果および考察
子どもたちの放課後は塾や習い事が目立ち、友達と毎日自由に遊ぶことは少ない。そして、子どもたちはお互いの予定を把握して遊ぶ約束をしており、塾や習い事が子どもたちの生活行動を規定していた。造形サークル「たけとんぼ」に参加している子どもでも、必ずしも図工が好きというわけではなく、親に勧められて「たけとんぼ」に来ている子どもも多い。塾や習い事でできた友達とはその場限りの付き合いが多く、それ以外では交流が無く親密な友達関係が築かれていない。自由に楽しく遊ぶ友達関係の中心は、学校や家の近所の友達が多く、その人たちを仲の良い友達と認識している子どもが多かった。
その他の生活時間は家族の影響を受けており、休日は家族と過ごすことが多く、学校週5日制が子ども自身の活動時間を広げ、友達関係を育むことにはつながっていなかった。
まとめ
平日の放課後は塾や習い事に通い、その合間に、友達と遊ぶ時間を約束していた。休日は家族と過ごし、友達と自由に遊ぶ時間が十分に確保されているわけではない。こうした子どもたちの中には多忙感を感じている者もいた。子どもたち自身が自由に他者との関係を深められるよう、習い事をいたずらに増やさず、友達と思い切り遊べる時間を尊重することが大切であるといえよう。